8期生第7回 語り「プロップ信者としては何としてでも新しい解釈を発見したかったなどと供述しており」

こんにちは、8期生の齋藤です。タイトルがバカ長くてほんとすみません。その代わりに(?)、前書きはあまりせずに内容紹介に入っていこうと思います!

まあぶっちゃけおもしろいネタが思いつかなかっただけです(正直)。

今回は、「語り」について学んでいきました。

ストーリーの語られ方は、無数の中から重要な出来事のみを抜き出して、最も意味深く面白くなる順序になるように並べることだそう。今回のゼミではそんな語りの方法・戦略を、名作映画『テルマ&ルイーズ』を批評テクストとして見ていきました。

○映画の語りの戦略

数々の映画では、観客を謎で引っ張り、情報を小出しにすることで謎への興味を持続させています。例えば今回のテクストである『テルマ&ルイーズ』では、ルイーズがつらい経験をしたという情報を小出しにすることで、「何があったの?」と謎で引っ張っていますね。

○ネガティブ→ポジティブの語り

『テルマ&ルイーズ』では……

・テルマが主体性を獲得した

・支配的な家庭にいたテルマが旅に出る

などがあります。

ただ、逆のポジティブ→ネガティブの語りもあります。

『テルマ&ルイーズ』では、バカンスしていたテルマが男に乱暴されそうになるシーンがその一つです。このシーンは序盤も序盤で、主人公二人の逃走劇の始まり。最初からハラハラさせられる展開ですが、この事件があるから『テルマ&ルイーズ』が動き出していくわけですね。

人生山あり谷ありといいますが、このように映画の中ではネガティブ→ポジティブ、ポジティブ→ネガティブの語りが効果的に使われています。

○プロップの31の機能

語りの方法には、このゼミではお馴染みになりつつある「プロップの31の機能」も紹介されています。31の機能をずらずらと並べるのは尺の都合で遠慮を……とも思いましたが、レポートを書くときに自分がコピペできるように記しておこうと思います。

1 家族の一人が家を留守にする (不在)

2 主人公にあることを禁じる (禁止)

3 禁が破られる (侵犯)

4 敵が探りをいれる (探りだし)

5 敵が犠牲者について知る (漏洩)

6 敵は犠牲者またはその持ち物を入手するために、 相手をだまそうとする (悪計)

7 犠牲者はだまされて、 相手に力を貸してしまう (幇助)

8 敵が家族のひとりに、 害や損失をもたらす (敵対行為)

9 不幸または不足が知られ、主人公は頼まれるか、命じられて、派遣される(仲介・連結の 契機)

10 探索者が反作用に合意もしくはこれに踏み切る(始まった反作用)

11 主人公は家を後にする (出発)

12 主人公は試練をうけ、 魔法の手段または助手を授けられる (寄与者の第一の機能)

13 主人公は将来の寄与者の行為に反応 (主人公の反応)

14 魔法の手段を主人公は手に入れる (調達)

15 主人公が探しているもののある場所に運ばれ、 つれて行かれる(二つの王国間の広が

りのある転置、 道案内)

16 主人公とその敵が直接に戦いに入る (戦い)

17 主人公が狙われる (照準)

18 敵が負ける (主人公の勝利)

19 初めの不幸または欠落がとりのぞかれる(不幸または欠落の除去)

20 主人公は帰還する (帰還)

21 主人公は迫害や追跡をうける (迫害、追跡)

22 主人公は追跡者から救われる (救い)

23 主人公は、気付かれずに家または他国に到着する (気付かれない到着)

24 偽の主人公が、 根拠のないみせかけをする (根拠のないみせかけ)

25 主人公に難題を課す (難題)

26 難題が解かれる (解決)

27 主人公が気付かれる (判別)

28 偽の主人公や敵、加害者が暴露される (暴露)

29 主人公に新たな姿が与えられる (姿の変更)

30 敵が罰される (罰)

31 主人公は結婚し、即位する (結婚もしくは即位のみ)

現代の映画の中でもこの31の機能を用いる作品もありますが、 一人の英雄の力や美徳を祝福する形をとらないものをもちろん存在します。 リアリティを出すために主人公に欠点が与えられ、時間による進歩もないような作品もまたある、とのことです。

○断片化された語り口

語りの戦略として、「断片化された語り口」についても学んでいきました。その特徴として、

・別々の人物の視点で語られる

・同じ人物でも別の時間軸で語られる

などが挙げられます。

このような語り口は、通常の物語性の中で一貫性に変化を加える効果があり、登場人物の行動は「時として自身の意図を超えてしまう」とのこと。

○『テルマ&ルイーズ』の批評

ゼミの後半ではいつもと同じく、今回取り上げたテクストである『テルマ&ルイーズ』の批評をしました。毎回、テクストを「この映画は○○という映画だ」と言えるようにするのが目標。

元々『テルマ&ルイーズ』は色々な解釈がされており、

①男性がしきる生権力に屈した(処刑)

②当時の社会の規範からの脱出

③シスターフット 女性同士の絆を作った

といった考え方があります。

これも踏まえ、8期生ゼミでも独自の答えを見つけようと取り組みました!

○『テルマ&ルイーズ』はプロップの31の機能に当てはまる?

今回「語り」でプロップの31の機能をさらったこともあり、本作をその31の機能に当てはめてみよう!ということになりました。そこで、以下の二通りで解釈することができるとわかります。

①結婚や権力、メキシコへたどり着くことを成功報酬とするなら×

②自由を成功報酬とするなら○

詳しくは以下の通りです。

①「メキシコにたどり着かなかった」ネガティブ解釈

 旅をする→敵対者(警察)と闘う(逃亡する)→逃げきれず崖から飛び降りたから二人が敗北→二人はメキシコ到着という報酬を獲得できなかった

②「自由を得た」ポジティブ解釈

 旅をする→敵対者(警察)と闘う(崖から飛び降りる)→警察は二人を逃がしてしまったので敗北→二人は自由・解放を獲得

ですが、ここで疑問が出てきます。なぜプロップの31の機能を当てはめるとき、二通りの解釈ができるんでしょうか?

その問いに対して8期生が出した考察が、以下の通りです。

プロップは「男性主人公が冒険して成功を収める」という、男性的な成功譚です。従来プロップの途中で終わる物語は成功していないと解釈されます。

しかし、本作はそこに「自由を獲得する」というプロップに沿ったもう一つの筋が織り込まれています。構造が二重化されているんです。

その二重化された構造によって、『テルマ&ルイーズ』は「男性的な成功譚」を壊すのと同時に、プロップの構造主義的な絶対性の瑕疵をあぶりだすことができています。

つまり、批評理論的に言うと……

『テルマ&ルイーズ』は、ポストモダン的構造主義の作品。

語りの「自身の意図を超えてしまう」という言葉は批評にさえ通用するということですね。

あくまでこの批評は一つの解釈にすぎませんが、「どんな作品なの?」という問いに語りの手法を絡め、綺麗に決着をつけられたと思います!

私はプロップ信者(?)なので、プロップの31の機能の新たな応用の仕方が見つけられて嬉しい限りです。笑

長くなったのでここらへんで。ご拝読ありがとうございました!

コメントを残す