秋学期第12回ゼミ

こんにちは、横野です。

 

今回はラドヤード・キップリングの小説『ジャングル・ブック』を読み、ポストコロニアル批評を行いました。

 

実は第11回のゼミでディズニーアニメにおけるオリエンタリズムについて議論になった時、「今放映されているディズニー映画の『ジャングル・ブック』は、オリエンタリズムが顕著に出ているのではないか?」という話になり、急遽ジャングル・ブックを扱うことになったんです!

 

今放映されている作品は持ち込むことが出来ないため原作の小説を批評し、比較・参考資料としてディズニーが過去に制作したアニメ版も用いました。

 

実際に作品を読んでみると、ポストコロニアル批評で読み解ける部分がたくさん見つかりました!

ディズニー好きの室さんだからこその発見です。さすが…。

 

早速始めていきますね。

 

まず、『ジャングル・ブック』についてです。

 

ジャングル・ブックは、ジャングルで育った黒髪の少年モウグリの物語です。モウグリは黒ヒョウのバギーラに拾われオオカミに育てられましたが、オオカミ達によって人間の村に帰そうという話になります。オオカミに頼まれたバギーラはモウグリを人間の村に連れていくため、熊のバルーと共にモウグリと過ごしながら様々な困難を乗り越えます。そして、最終的にモウグリは自ら人間の村に帰っていくというお話です。

 

今回はその中でも「カーの狩り」という短編を考察しました。

 

「カーの狩り」では主に下記の人物・動物が登場します。

 

モウグリ:黒髪の少年。

バギーラ:黒ヒョウ。モウグリを拾った存在。

バルー:熊。陽気な存在。

カー:ニシキヘビ。モウグリを食べようとする。

バンダー・ログ:サルの集団。モウグリをさらう。

 

この短編をポストコロニアル批評で読み解くことで、

【登場人物のビジュアル】

【バンダー・ログの存在】

【インド市の描写】

の3点が浮かび上がってくるという話に。

 

【登場人物のビジュアル】

モウグリは作品内で褐色肌、黒髪、黒い瞳など、様々な特徴が描かれています。また、作品内においてモウグリは野性的な描写を誇張して描かれているという話になりました。

最終的にモウグリはインド市に帰っていくため、インド人であることが分かっています。

この事から、作品内でインド人の野蛮さ、野性的さが描かれているという結論に。

 

【バンダー・ログについて】

サルの集団であるバンダー・ログはジャングルにおいて接することが禁じられるなど、疎外された存在として描かれています。

また、掟を持っていない・自分たちの言葉がない・リーダーがいない・記憶がなくなるなど、他の動物に比べ能力の低さを誇張して描かれています。

 

発表者の提中さんは作品を読んでいる中で「インド人か日本人をモデルにしているのでは?」と考察し発表してくれましたが、議論の中では日本人をモデルにしているという結論に。

 

また、作品が執筆された1894年は日清戦争が起きた年でもあります。このことも影響しているのでは…という話になりました。

作者はイギリス人ですが、アメリカでは日本人が「イエローモンキー」と呼ばれていたよね、など様々な事例も

出てきました。

 

やはり私達自身が日本人なので、バンダー・ログについてはかなり盛り上がりました。ちょっと悲しい気持ちにもなりましたが…(笑)

 

【インド市の描写】

作品内でバンダー・ログはインドの廃墟した都市に住んでいます。

モウグリは当初その市が「すばらしいところ」と発言していましたが、その後「すごくひどいところに来てしまった」という消極的な発言に変わっています。

 

作品内ではわざとらしく腐敗した市の描写がされていることに疑問を持ち、「これはインドが植民地であることを表しているのではないか」という話になりました。

 

これら3点の問題は全てアジア、とりわけインドに対する嫌悪感や差別思想が表れています。

これは作者の経歴が大きく影響しているのでは?という話に。ここで軽く作者について説明を。

 

ラドヤード・キップリングはイギリス人作家で、生まれはイギリス領であるインド帝国ボンベイ。『東と西のバラッド』という作品では「東は東、西は西」という言葉を残しています。帝国主義者でもありました。

 

このように、キップリングは“イギリス人であるがインドで生まれ育ったどっち付かずの存在”という特殊な経歴だったんです。

イギリス人でもインド人でもない中途半端な存在…

あれ?これ、どこかで似た人を見ましたよね?

 

そう、モウグリもそっくりな状況なんです!ジャングルで育ったけれど、人間であるどっち付かずな存在。

 

つまり、作品と作者を重ねると、作者のインドに対する嫌悪感やイギリス・西洋の優位思想が表れるんです。

キップリングはインドで生まれ育っているけれどイギリス人であることに悩んでいたのだろうね…と皆で議論していく中で徐々に同情してしまいました。

 

そして、映画作品についても触れることに。

 

3期生は5人中3人がジェンダーに興味を持っていることもあり、映画作品では人間の女の子の描き方に気になる点が集まりました。

 

映画の中でモウグリは人間の村に帰ることを嫌がっていましたが、ジャングルの茂みから見た女の子に恋してしまい、村に行くことを決めます。

 

その女の子を見つけ、出会ったシーンが気になる!という話に。

 

・女の子は黒髪褐色。

・モウグリに気付いた女の子は意味深な微笑みをモウグリに見せる。

・水瓶で水を掬う間も目配せを送る。誘惑の表情。BGMもムーディーな音楽に。

・わざと水瓶を落としモウグリを呼び寄せ、最終的に水瓶をモウグリに運ばせる。

 

これらから、アジア人の女性に対する神秘的魅力・誘惑する存在という思想が表れているよね、という結論になりました。

 

 

今回はここでゼミが終了しました。

これまでこの作品を読んでいればバンダー・ログはただの嫌なやつだという印象で終わっていたとおもいますが、ポストコロニアル批評を通して、自分達アジア人を揶揄している存在と知ることで妙に親近感が湧いたりと、これまでとは違う読み方が出来る「批評理論」の楽しさを実感できる回だったなあと思います。

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