第7回のブログを担当します、中村美咲子です。
今週は、ダナ・ハラウェイの『猿と女とサイボーグ』から「サイボーグ宣言」について学びました。そして、後半では映画『オーシャンズ8』の分析を行いました。
「サイボーグ宣言」に述べられていることを端的にいえば、我々はサイボーグであるということです。サイボーグとは、おそらく多くの人が思いつくそのまま、機械と生体の2つの特徴を兼ね備えた存在です。そして、この2つの特徴の境界をあいまいにすることで脱構築がおこなわれます。さて、我々がサイボーグであるというのはどういうことでしょうか。ここでは、サイボーグの機械と生体という特徴を「人工」と「自然」という二項対立的なものとして、このような二項対立がさまざまな世界に棲んでおりもちろん我々人間もその二項対立とみられる2つの要素を兼ね備えた存在で、サイボーグ同様に脱構築が可能なのです。
ハラウェイは、さらに再構築も可能であるといいます。そこでは今まで信じられてきた資本主義や家父長制によってつくられてきたアイデンティティによる連帯ではなく、アフィニティを介した連携を考えることを推奨しています。まず、今まで信じられてきた資本主義や家父長制は、ジェンダーや階級、人種などの階層的な二項対立を生み出してきました。これらは、自然なものとして信じられてきています。けれども、それは搾取の構造であって当然自然なものではありません。このような人為的に生まれたアイデンティティによる紐帯には限界があります。なぜなら、アイデンティティの断片化が起こっているからです。つまり、特定の1つのアイデンティティのみで構築されている存在はおらず、我々はいくつものアイデンティティを有しています。このように複数のアイデンティティで構築されることから、ある1つのアイデンティティでは、安定した連帯を築くことができません。そこで、アフィニティによる連帯が検討されます。アフィニティは、血縁によらず自己の選択によって繋がるということで、既存の二項対立的思想を生み出したさまざまな制度に対抗する方法なのだと考えられます。
ここからは、『オーシャンズ8』の分析です。『オーシャンズ8』は、主人公のダニーが刑務所から出所する場面からはじまり、女性のみの犯罪集団で1億5000万ドルのダイヤのネックレスを盗み出すことで巨額の報酬を得て物語が終結します。この作品において、特筆すべき点はやはり女性のみで盗みをおこなうという点です。ダニーによって集められた6人の女性たちは、さまざまな犯罪に必要な技術をもっており彼女たちは無事に作戦を成功させます。この『オーシャンズ8』を「サイボーグ宣言」を踏まえて分析を行うと、彼女たちの紐帯は女性のみであるという点ではアフィニティといえるが、資本主義の制度に対抗するわけではないという結論が出されました。理由としては、彼女たちの中に一定程度の差別意識が見られることと、儲けたお金で資本主義社会に巻き込まれる形で物語が終わることが挙げられます。彼女たちが計画のメンバーを集める際に人種における差別や偏見に似た表現を感じることがありました。それは、ハッキングやスリといった明確な犯罪をおこなうのが西欧人ではないことや、ロシア人がハッカーであるという職業と人種が結びつくような発言などです。また、多くの女性はダイヤを売却して得るお金が目的で計画に参加します。そして、得たお金で望んだ生活を手に入れていくのだと考えられます。彼女たちは資本主義国家において、社会を変化させるわけではなくその社会でうまく生きるすべを模索するだけなのです。この2つの点から、彼女たちの関係を完全なるアフィニティだということはできませんでした。
最後までお読みくださりありがとうございました。