今回の特別講義のブログ担当の前田です。
年数回ゼミ外部より講師をお招きして行う特別講義。11/15に行われた秋学期第1回目(通算3回目)は東京大学大学院より平井裕香さんをお招きし、川端康成『禽獣』の研究についてのお話を伺いました。
↑写真右から五番目が平井さん。真ん中の男の方が目立っちゃってますね笑
恥ずかしながら我々ゼミ生の中に川端康成について詳しい人はおらず、平井さんに川端康成のイメージを聞かれても「ノーベル文学賞」「雪国」「伊豆の踊子」ぐらいしか出てこず・・・
しかし、文学研究においては長い歴史が積み重ねられている作家でもあります。故にその先行研究をいかに打ち破るかという平井さんの努力や熱意に、我々は心を打たれました。
『禽獣』は川端康成の初期ごろの作品で、よく文学研究の対象とされる作品です。タイトルの通り、禽(鳥類)と獣(犬など)が多く出てくる小説ですが、それらの死にフォーカスが当てられていてなかなか残酷な内容で、読むのに難儀しました。
従来の文学者もこれを、私小説(的な小説)、動物と女性を重ねるなど「いやらしい」小説、構成が複雑な読みにくい小説であるなどと論じています。ですが平井さんはそれらを越えた読みを行う為、物語の語りの構造に注目しました。
この小説の主人公は、様々な動物や登場人物ごとに区切られた場面を行ったり来たりしながら語りを行っています。その場面一つ一つは動物虐待について淡々と述べられているだけですが、そうした場面の流れ全体を見た時はじめて主人公の良心の呵責が見えるというのです。
その他にも、普通に読むだけでは気づきもしない様々な知見を発表して下さり、作品分析に関する様々なヒントをいただけたように思います。
そして長い特別講義のあとは、全員でお食事会へ行きました。対象とする小説は暗いですが、平井さん自身は気さくな方でとても楽しい時間を過ごせました。
今回は本当にありがとうございました!